「藤戸」の怨霊、おんりょう津勘吉
「藤戸」の怨霊が杖をはげしく振つて自分の脇のあたりに突きさすやうな動きをするが、さういふ時身体全体は依然として朦朧と立つてゐる。
立つてゐる形は崩れない。一つの形から一つの形への推移が純粋なのであらゆる瞬間が彫刻である。
彫刻に於ける「形」といふのは必ず主要な形態に一切を統一して、その動勢の意味を公理ある型にまで上昇せしめたものである。決して中途半端な、あいまいな、四散するやうな二次三次的な形態はとらないのである。
さういふ点で能の動作の各瞬間が彫刻的一齣であるといへる。